「洗米」=米を洗う?
今日は「洗米(xi mi・シーミー)」と言う中国語について書きたい。「洗米(xi mi・シーミー)」は直訳すると「米を洗う」だが、「米を研ぐ」と言う意味である。
ご飯を炊く前に、米のヌカを取るため、水を入れ、かき回して水を捨てる作業のことを、日本語では「米を研ぐ」と言うが、中国語では「洗米(米を洗う)」と表現するのである。
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表現の違い=考え方の違い
日本語の「米を研ぐ」は中国語の「洗米」だ。辞書にもそう載っているし、中国人に米を研いでほしい時、「洗米」と言えば問題なく伝わる。
では、なぜ「洗米」が気になる中国語なのか?
なぜなら、この言葉が“米”に対する日本人と中国人の考え方を表していると思うからだ。
米を研ぐ?
「研ぐ」と言う言葉の意味を考えてみよう。この言葉には磨いて綺麗にする、ピカピカにする、という意味があるので、「刀を研ぐ、宝石の原石を研ぐ」と言うように使われる。
“研ぐ”ことによって表面の凹凸が無くなり、金属や鉱石は美しく光を放つようになるのである。
その意味を踏まえた上で、冷静に「米を“研ぐ”」作業を思い浮かべてみると、少し違和感を感じるのではないだろうか。
お米に水を入れてかき回し、ヌカと一緒に水を捨て、それを数回繰り返すだけだ。
“研ぐ”とは言っても、実際にやっているのは、米を“洗う”作業である。“研ぐ”の意味が本来持つような作業は行われないのだ。
だから中国語のように、米を“洗う”と表現するのがふさわしいはずだ。
では、どうして日本語では米を“研ぐ”と言うのだろうか。
米に対する日本人の意識が違う
米を“研ぐ”という言葉には、日本人の、お米に対する熱い思いが込められているのではないだろうか。日本では、縄文時代から稲作が行われてきたと言われている。また、長い間、今で言う税金を(当時は年貢(ねんぐ)と呼ばれたが)お米で収めてきた歴史もある。

つまり、お米は、日本人にとって、最も重要な食べ物であっただけでなく、それを超える価値がある物として扱われてきたのである。お米は、金や銀などの価値のある金属にも勝るとも劣らない物だったのだ。
その大事な大事なお米を炊いて食べる時、ただ単に洗って食べるは失礼だと考えた。
まるで高価な金属を磨きあげるよう、美しく表面を整えたいと言う気持ちになったのだろう。
そのお米に対する熱い気持ちが、いつしか日本人に、「お米を“研ぐ”」と表現させたのではないだろうか。
【参考】 「米を研ぐ」は中国語で、「洗米」以外に「淘米(tao mi・タオミー)」とも言う。「淘」は「(水の中ですすぎ)すくい取る」という意味である。なお、日本語を直訳して、「磨米(米を研ぐ)」と言っても通じない。 |
炊飯器一つを見ても
日本人のお米に対する思いは、実際にはっきりと見て取れる。炊飯器一つを見てもそれは明らかだ。
日本の炊飯器は世界最高水準だと言われている。炊き上がりの美味しさを追求し、長時間保温しても美味しい。
中国の炊飯器と比べるとその差は歴然だ。もちろんちゃんと炊けるが、全然違う。
日本の素晴らしい炊飯器は、家電メーカーの炊飯器開発者の中に流れる、「米をおいしく食べてもらいたい」という熱い思いが生み出した芸術品なのである。
言葉の違いを考えると文化や考え方の違いが見えてくる
言葉は人間の考え方と関係がある。「米を研ぐ」、「米を洗う」のように、同じ意味でも表現方法が違う場合、そこには文化や考え方の違いが関係している場合が多いのだ。
外国語を学ぶ際、表現の違いから色々なことが見えて興味深いと思う。

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中国生活でちょっと気になった中国語をシリーズ記事で書いていきます。過去の記事についてはこちらからどうぞ |
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この記事へのコメント
通りすがり
米の研ぎ方ですが、日本では正しい研ぎ方として本当に「研いで」いますよ。ただ水を入れてかき回しているだけではありません。水を少な目にしてやさしく米粒と米粒を擦り合せて表面を薄く削り取る作業をおこなっています。中国ではどのようにしているかはわかりませんが、日本では本当に米を研いでいるのです。
管理人
コメントありがとうございます。
勉強不足ですみません。本当に研いでいるのですね。
日本では米が大事に扱われているということがわかります。
クマノコ
コメ作は日本が伝えたのですがと言う思いも湧いてきました
私は技術の進歩で磨ぐ作業が変っても良いとは思いますが
言葉が歴史なのだと思う人間ですので洗うと言う言い方には馴染まない堅物かと思いますが、磨ぎ汁も言葉替えしてるのかと疑問が有ります、米の洗い汚水なら納得ですが、丁寧に米の洗い終わった水の言い方でも正しいでしょうが、言葉を守り伝える事が後世に遺す財産であるのです、有難う御座います 学びました