日本で広がる中国の電子マネー
日本に一時帰国した。こちらの写真をご覧いただきたい。
これらは全て日本の写真だ。
みなさんも、日本国内で一度は見たことがあると思う。
これは、中国で今やほとんどの人が利用している、「支付宝(アリペイ)」、「微信支付(ウィチャットペイ)」という電子マネーのポスターだ。
中国語で書かれているので、もちろん対象は中国人だ。
日本に訪れる中国人観光客により気軽に買い物してもらうため、中国の電子マネーが日本でも使えるようになっているのである。
電子マネー?
「なぜ“日本”で“中国”の電子マネーに対応する必要があるの?別に中国人観光客も日本円に両替して来るだろうから現金払いしてもらえばいいのでは?」電子マネーがそれほど普及していない日本にいたら疑問に思うかもしれない。
しかし、中国の現在の電子マネー事情を知れば、中国の電子マネーを受け付け可能にしたことが、日本の店にとって大きなメリットであることがわかるだろう。
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中国で電子マネーの利用率は非常に高い
中国には上記した「支付宝(アリペイ)」、「微信支付(ウィチャットペイ)」以外にいくつか電子マネーがあるが、事実上、この2社が中国の電子マネー業界を席巻している。今や中国ではほとんどの人がこの電子マネーを利用していて、利用率は非常に高い。普通に社会で働いている人で、利用していない人はいない、と言っても過言ではない。
もし電子マネーを使用していないと、「え?無いの?」と驚かれるくらいだ。
中国で「電子マネーを使用していない人」は、日本で「携帯電話を持っていない人」と同じくらい珍しくなっている。
実際どれくらい使われているのか、具体的な数字を調べてみた。
2016年のデータによると、1年間の中国国内の電子マネー決済回数は1251億回を超え、金額は3687兆元を超えたそうだ。
私ももちろん電子マネーを利用している。一応何かあった時のために現金を持っているが、私の記憶では、ここ半年現金は1度も使っていない。今の中国では、本当に“全て”の店で使えるといっても過言ではないのだ。
ここ半年現金は使っていない
しかし、驚くべきは、普及の速さだ。5年ほど前はスマホを持っている人も少なく、電子マネーはほとんど知られていなかった。
それが、ほんの数年で、ほとんどの人に利用されるまで浸透したのだ。
結果、今の中国は世界で電子マネーが最も利用されている国の1つとなっている。
どうしてここまで普及したのだろうか。
普及が進んだ理由1:国をあげて進めた電子マネー事業
電子マネーがここまで普及したのは、国が電子マネー事業を推進したからである。中国は偽札が多い国である。
個人経営の店には、偽札をチェックする機会がかなりの割合で導入されており、50元、100元などの高額紙幣を出すと、店員にかなり入念にチェックされる。
偽札を受け取ってしまったら店にとっては大損害だからだ。
この偽札問題は大きな社会問題となっており、偽造が難しいホログラム付きの紙幣などが発行されてきたが、完全に防ぐことはできないようである。
そこで考えられたのが、電子マネーだ。そもそも流通する現金を減らしてしまえば、偽造できない。
店も偽札を受け取る心配がないため、大きなメリットがあるのだ。
普及が進んだ理由2:どこでも使え、小銭がいらず、割引もきく
もちろん、店側だけにメリットがあるだけではここまで普及は進まない。利用者側、全ての人にとってメリットが大きいのである。
そのメリットは「どこでも使え、小銭持つ必要がなく、割引もきく」ことだ。
今や中国ではほとんどの店で「支付宝(アリペイ)」、「微信支付(ウィチャットペイ)」のQRコードが貼ってあり、簡単に支払いが可能である。
電子マネーを使えばお釣りを貰う必要がないので、ジャラジャラと小銭を財布から取り出す煩わしさもなくなる。
さらに、国が普及を推進しているために電子マネーで支払えば割引があったりもするのだ。
小銭をジャラジャラさせることもない
普及が進んだ理由3:普通の財布と同じように使える
使い勝手が悪ければ使いたいと思わないだろう。ここまで受け入れられているということは、使い勝手が非常に良いということなのだ。
財布と同じように自由にお金を出し入れできるのである。
友達同士でも簡単にお金の受け渡しができる。
スマホに金額を入力し、表示されたQRコードを相手にスキャンしてもらっても良いし、ウィチャット上でお金を渡すこともできる。
最近では紅包(日本でいうお年玉)も電車マネーで渡す人が多くなっているという。
中国人にとってもはや財布と同じになっている
普及が進んだ理由4:お金を盗まれない
また、お金盗まれるリスクが少ないというのも人気の理由らしい。現金を落としたらこの国ではほぼ100パーセント戻ってこないが、電子マネーはパスワードを入力しないと引き出せないため、万一スマホを落としてしまったとしても、お金を盗まれる可能性は少ないのだ。(もちろんスマホ本体は返ってこないが…)
特に中国の若者は、「現金を持つよりはるかに安全だよ」と口々に言い、現金自体を持ち歩かない人も増えている。
普及が進んだ理由5:不正や犯罪を防げる
現金を使わわないことで、不正や犯罪を防ぐことができるのも大きなメリットだ。例えば、店員が店の売り上げを盗む問題は、店主にとって深刻な問題だが、電子マネーにしてしまえば、店員が現金を受け取ることなく直接店の口座にお金が入るため、未然に防ぐことができる。
大量の現金を輸送すれば、強盗などの心配もあるが、電子マネーなら怖くないのだ。
もちろんデメリットもあるが
もちろん、電子マネーにもデメリットがある。スマホの電源が切れれば使用はできなくなるし、パスワードなどを盗まれてお金を奪われるリスクもある。
LINEでスタンプをポンと押すくらいの気軽な感じで送金できるため、間違って違う人に送金したり、金額を間違ったりすることもある。
さらに、QRコード1つで簡単にお金を受け取れるため、詐欺師が偽のQRコードをお店の支払いQRコードの上に貼り付け、お金を奪うと言った犯罪事例も発生している。
店のQRコード。この上に詐欺師が自分のQRコードを貼ったという犯罪が発生した
現金が消える日も遠くない!?
しかし、メリットの方がはるかに多いと思う。中国での利用状況を考えると、それが大多数の意見だということになる。
事実、普及率は日本では考えられないほど進んでいて、冗談抜きで、そのうち現金は無くなってしまうのではないかと思うほどだ。
すでに普通のレストランで、現金が利用不可、「支付宝(アリペイ)」か「微信支付(ウィチャットペイ)」しか受け付けないというところもある。
日本のレストランで“現金を受け付けない”などと書いたらたちまち潰れてしまいそうだが、中国では電子マネーが当たり前なので、やっていけるのである。
むしろ、現金をなくした方が、従業員の不正、現金の盗難を防ぐことができ、店側にとってメリットが大きいのだと思う。
逆に今の中国では、現金自体を持ち歩かない人も多いため、電子マネーを受け付けないなら、店はたちまち潰れてしまうだろう。
道端で果物を売っているおじさんも電子マネー対応
矢印のところにQRコードがある
中国以外で「支付宝(アリペイ)」、「微信支付(ウィチャットペイ)」を導入するメリット
ということで、現在、中国人にとって、電子マネー決済は必要不可欠なツールとなっている。なので、中国人観光客が多い日本で中国の電子マネーを受け付けることは店側にとって大きなメリットがあるのだ。
中国人にとって、電子マネー決済は当たり前になっているので、気軽に決済できる中国の電子マネーを受け付ければ、中国人観光客の消費を促進することになるのだ。
日本人が中国に旅行で行くときは現金払いでいいが、中国に住むなら電子マネーは必須
最後に、日本人が中国に行くときに電子マネーを使うべきかどうかの話をしたい。日本人が中国に行く時、電子マネーを使った方がいいのだろうか。
私の意見だが、
旅行程度の短期なら現金払いがいいと思う。上記したように、現金を受付ないという店もあるのだが、さすがにそれは稀で、基本的に現金払いが可能で、現金があれば困ることはない。電子マネーの登録も現地の銀行口座が必要だったり手間がかかるので、短期なら現金払いが良いだろう。
しかし、中国に長期滞在するなら、電子マネーは必須だと思う。使ってみると本当に便利だ。割引はきくし、小銭はいらないし、現金を出し、小銭をチェックする煩わしい生活にはもう戻れない。
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この記事へのコメント
WL
中国で住む、たまに中国へ行く日本人にとっても、開通までのハードルを考えるとWechat Pay最優先で良いのだと思いますね。
ペッペケ
コメントありがとうございます。
微信支付が支付宝をついに抜いたのですね。
たしかに周りを見ても微信支付を使っている人が多い気がします。
WL
ペッペケ
エラーとかあるともう片方を使いたくなりますね。
私も両方もっていますが、メインはwechat payですね。
bigpaddy
ペッペケ
コメント&情報ありがとうございます。
一度に5000元以上ですか…。家賃とかでそれくらいの支払いをしている人もいるかもしれませんね。
WL
ペッペケ
補足情報ありがとうございます!