バス停で
今日、バス停でバスを待っていたらひと組の老夫婦に道を聞かれた。「深セン北駅まではどうやって言ったらいいの?」
その老夫婦は、明日「深セン北駅」から高鉄(新幹線)に乗って故郷の江西省まで帰るのだが、道に迷って新幹線に乗り遅れないように、わざわざバス停の表示を見に来たのだった。
しかし、結局どうやって行けばいいのかイマイチわからなかったようだ。
スマホで検索してあげるとそのバス停からは直接「深セン北」まで行くバスはなく、乗り継ぎが必要なことがわかった。
そりゃバス停の表示だけ見てもわからないよね。
σ^_^;
乗り継ぎの駅とそこからの行き方を教えてあげるとたいそう喜んでくれ、「謝謝、謝謝!」と感謝の言葉を言ってくれた。
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あんたは実家に帰らないのか?
老夫婦は私に聞いてきた。「あんたは実家に帰らないのか?故郷はどこだ?」
先日も書いたが、「実家に帰るのか?」というフレーズは今の深センではよく聞く言葉である。(参考:旧正月(春節)前の挨拶は「実家に帰るの?(回老家吗?)」)
「私は海外育ちでね、故郷の正月は1月1日で終わっちゃったから帰らないよ」
と返すと、
「そうか、海外の人はすごいのぉ、携帯電話でバスを調べられて、ワシら機械を使えないからダメだ、ありがとうよ」
と言った。
海外は関係ないんだけどな…σ^_^;
そんな感じで、バスが来るまでの数分間、老夫婦との会話が始まったのであった。
その話の中で、華やかに見える春節に大変な一面があることを知った。
10年ぶりに故郷に帰る
聞くと、その老夫婦は故郷に帰るのは10年ぶりだという。毎年故郷に帰って家族や友人に会う人が多いのに、それはなかなか珍しい事である。
そうなんだ。じゃあ、もう故郷には知り合いはいないのかなぁ。
と思ったのだが、「深センには20歳頃出てきてもう50年は経つが、故郷にはまだまだたくさんの友達や親戚がいる」とのことだった。
へぇ、50年経っても友達がたくさんいるなんてすごいなぁ。都市の人は人間関係が希薄になりがちだが、田舎の方は人情が熱いんだなぁ。
ん?でも、じゃあどうして10年も帰ってないの?
不思議に思った。
お金がないから故郷に帰れない
すると、その老夫婦は言葉を続けた。「だって、お金がないから。故郷に帰ったら最低4〜5万元(約70万〜80万)はかかるからねぇ。」
そんな大金が?どうして?
メンツの問題
聞くと、その老夫婦はさらに色々と話してくれた。「田舎の方では、外に出ている人が故郷に帰った時にお金を持ち帰り、みんなにあげるのが伝統なんだ。もしあげないとこっちのメンツが潰れてしまう。みんな「田舎を出て都市に住んでるのにお金を稼げてないのか」って思うもんだよ。もちろん、向こうからお金を要求することはないし、あげなくても文句を言う人はいないけど、あげないととても恥ずかしい。旧友に会ったら数百元(約数千円)、親戚に会ったら数千円(数万円)は挨拶がわりに渡さないとダメだ。親戚の子が家や車を買ったら数万元(数十万)はあげる。だから、故郷に帰ると最低4〜5万元はかかるんだよ。でも、私たちはそんなお金がない。だから10年間帰ることができなかった。会わなければお金をあげる必要はないしね」
つまり、メンツの問題で故郷に帰れないということなのだ。
しかし、帰りたいのに、お金の問題で故郷に帰れないとはなんとも悲しいことだなぁ。
そんな見栄を張らなくてもいいのに・・。と思うが、そういう伝統なのだから仕方ないことなのかな。
なお、この話はあくまでこの江西省出身の老夫婦に聞いたものなので、そんなしがらみがない人もたくさんいるだろうが、確かに、故郷に帰ったらお金をたくさんあげなければならないという人は多いようだ。
春節が間近
さて、春節まであと2日だ。(2018年は、2月16日が旧暦の正月(旧暦の1月1日)である。)
深センでも春節の雰囲気がいっそう強くなり、街を歩く人、車の量もかなり減ってきている。
大きな荷物を抱えて長距離バスに乗ったり、駅に並ぶ人の姿も見かける。
年に一度の大型連休で故郷の家族に会うことを楽しみにしている人も多いと思うが、今日会った老夫婦のように、色々な伝統が重圧となり、大喜びで帰郷できない人も少なくないのだろうなぁ。
一人一人様々な思惑を乗せて、高鉄(新幹線)は今日も「深セン北駅」を出発する。
【この記事はここまで】お読みくださりありがとうございます
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