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香港で見かける竹の足場
香港を旅行したことがある人は、きっと「えー!大丈夫なの?」と思ったことがあるに違いない件。それは竹の足場である。
建物の補修などで高所の作業のための足場を、竹と紐だけを使い、器用に組み立てられている。
特に香港の街を歩けば確実に見かけるので、香港旅行に行ったことがある人は「香港にあるある!」と思っていただけるに違いない。
この竹の足場があると“香港らしい”と感じるのは私だけではないはずだ。
安全性は大丈夫なのか?
で、日本人が見て確実に思うのが、安全なのか?ということである。
足場の下には特に固定するものもなく、置いているだけ。
足場の下はこんな感じ
ポンっと蹴ったら崩れちゃうんじゃないの?と思ってしまう。
竹は自然の物なので、太さも様々だ。古くなればひび割れたり、腐食してきたりもするだろう。
その自然のものを使って足場を組み、時には何十メートルの高層ビルの足場にしたりしている。
崩れたりしないの?大丈夫なの?安全なの?
こんなビルの足場も竹・・
ビルの下から見上げたらこんな感じ
大丈夫!by香港人(^^)/本当に?
建設系の仕事をしている香港人に「竹の足場って安全なの?」と聞いたことがあるが、「大丈夫!経験ある人がやっているから。滅多に事故は起きない」
と言っていた。
滅多に・・?ということは起きているんじゃん!・・と思ったけど、日本の建設現場でも事故が起きてしまうことはあるもんなぁ。
日本と比べてどうなのだろうか。
日本と比べて建築現場の安全性はどうなのか?
客観的に比べるには根拠となる数字が必要だ。本当に竹足場は安全なのかどうか、日本と香港の労働災害について調べてみた。
安全基準は高いと思われる日本でも、平成27年度には327名の方が建設現場でなくなっている。(建設業労働災害防止協会より)
そして、香港はというと、少し古い2006年のデータだが、香港では建設業の事故で20名の方がなくなっている。(香港特別行政府労働安全衛生局より)
日本と香港は人口の差があるので、比率を計算してみると、日本の人口1000万人当たりの年間建設業死亡者数は25.7人、で気になる香港は・・というと28.5人になるのである。
参考) 日本:(327人×1000万)÷人口約1億2700万=25.7 香港:(20人×1000万)÷人口約700万人=28.5 |
25.7と28.5・・・日本と香港、死亡事故発生率がほとんど変わらないことに驚いた。
もちろん、これは建設業全体の数字を単純に比較しただけの数字である。
が、竹足場を使いまくっている香港の建設現場における死亡事故の発生件数は日本と大して差はないというのが事実なのである。
これを見る限りでは、香港の建設現場は日本と同じくらい安全ということになる。
つまり、その香港人が言うように、竹足場は本当に「大丈夫!」だということが客観的データに基づき証明されたのだ。
※ただ、これは香港に限っての話。深センを含む中国本土では建設事故発生件数は桁違いであろう。
なぜ安全なのか?
しかし、この竹の足場は、ぱっと見、不安定に見える。上記したように、コンクリートにただ置いてあるだけで、簡単に崩れそうにも見える。
なぜ安全なのだろうか?
それは、経験に基づく、職人の技術があるからだ。
建設業に携わるその香港人がこう言っていた。
「この竹の足場を組むにはは経験がないとだめなんだ。竹足場職人の長年の感覚の上に成り立っている。でも、最近の若い人はこれをやりたがらないから、竹足場職人の数が減ってきている。将来、竹の足場はなくなってしまうかもしれないなぁ。」
そうかぁ・・・これは、職人の技術によって、文字通り"支えられている"足場なのである。
日本では絶対に認可されないが、画期的だ
実は、竹を足場にするのは実は大きなメリットがある。竹は重量当たりで言うと鉄よりはるかに大きい引っ張り強度、圧縮強度を持つ。
つまり、同じ強度の鉄と竹の足場の重量を比べると竹の方がはるかに軽いのだ。
だから、足場をのための設置作業、材料の運搬にかかる作業も楽で費用もはるかに安く済むのである。
竹の運搬車
しかし、だからと言って、日本の建設現場では絶対に認可されないだろう。
日本は建設業関係の法令がしっかり定められている書類主義の国。
足場職人が「経験上大丈夫!この足場は安全!」と言ってもダメなのである。
日本の建設業で使用される足場は、安全かどうか構造計算を行い、計算上安全と客観的に証明できなければいけない。
自然の竹は大小長短太細さまざまあるため構造計算が非常に困難で、客観的に数字上で証明することはできないため、日本の現場では事実上使用は不可能だ。到底使用は認められないのである。
香港の足場職人の技術はすごいのだ
数字が示しているように、香港の建設現場は日本と同じくらい安全だ。それは香港の足場職人の技術の高さを証明している。構造計算はしていなくとも、彼らの経験が「大丈夫」と彼らに教えてくれるのである。
技術を持った足場職人がこれからも足場を組み、香港の街に“香港らしさ”を残し続けてくれればと思う。
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