バスの椅子にすぐに座らない
中国深センでバスや地下鉄に乗っている時、よく見かける光景なのだが、乗客が席を立って空いた席に、誰もなかなか座らないことがよくある。車内は混雑していて、席が空いたのだからすぐに座ればいいと思うのだが、誰もすぐには座らない。
ある人が椅子の前まで来て座るのかと思いきや、やはり座らない。椅子の前に立って、かなり長い間(10秒から20秒、時にはもっと長い時間)待ってから座るのである。
最初は、椅子の前で座らずに立って何をやっているのか?と疑問に思ったのだが、中国人の友達に聞いてその理由がわかった。
すぐに座らないのは、「椅子に残った人の温もりが気持ち悪い」からなのだ。
日本人はあまり気にならないと思う
私は、汚れているわけではないので、椅子の温もりは気にならない。というか、気にしたことがない。まぁ、確かに、冷静によくよく考えたら…、見知らぬオッさんが座って温まった椅子は気持ちのいいものではないかもしれないが、その後どうせ座るのだから、椅子の前に立って温度が下がるまで待つほどでもないと思う。
日本人で椅子の温もりがなくなるまで座るのを待つという人は少ないのではないだろうか。
少し分析してみたが、これも、小さな文化の違いなのである。
「椅子を温めておきました」
日本語に「椅子を温めておきました」という言葉がある。今は転じて「準備しておいた」という意味でも使うが、これは「椅子に温もりが残っていた方がありがたい」という気持ちから生まれた言葉だ。昔から、日本人にとっては座った椅子が冷たくてひやっとするのが不快とされてきたのだ。だから、先に誰かが座って温めてくれることはむしろ歓迎されることなのである。
だから、誰かが席を立った後温もりが残っていても、気にする人が少ないのだ。寒い冬であれば温まった椅子は逆に喜ばれるかもしれない。
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中国人にとっては
一方、中国人にとって、それはかなり気持ちの悪いことらしい。誰に聞いても人の温度が残っている椅子に座るのは嫌だという。なぜそこまで嫌がるのだろうか。
中国では、温かいものは早く腐敗するため、「温=不快」というイメージが生まれ、それが椅子の温もりを不快に感じるようになったらしい。
これはあくまで一説に過ぎないが、いずれにしても、椅子の温かさは中国人にとって気持ちの良いものではないのだ。
椅子の温もりを不快に感じる中国では、決して「椅子を温めておきました」という言葉は生まれないだろう。
国や地域が違えば文化や常識が違う
当たり前だが、国や地域が違えば文化や常識が違う。同じ国であってもそうなのだから、言語や歴史が異なる海外では違うのが当たり前だ。
大きな文化の違いもあれば、椅子の温度をどう感じるかというような小さな感じ方の違いもある。
いずれにしても、その違いを知るのは良いことだと思う。
どちらがいいとか悪いとかを決めてお互いを排斥するのではなく、異なっていることを知ることで、新しい発見や物事の見方ができるようになるからだ。
自分では常識だと思っていたことも実は常識ではないかもしれない。
そういうことに気付けるようになるのも、海外生活の醍醐味の一つなのである。
【この記事はここまで】お読みくださりありがとうございます
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この記事へのコメント
bigpaddy
長年の謎が解けました。そう言う事だったんですね。
ペッペケ
>
私も聞いて初めて知りました。
日本人なら、あれ?なんで座らないの?と思いますよねσ(^_^;)